現在の日本の金産出をリードする鹿児島県の菱刈鉱山。昭和後期という比較的最近発見された金鉱山ですが、高品位の鉱石と洗練された先端技術により、世界の採掘事業を支える存在ともなっています。その菱刈鉱山についてご紹介します。

                          

商業規模では唯一操業されている菱刈鉱山

菱刈鉱山とは鹿児島県伊佐市の菱刈地区にある金鉱山で、日本最大の規模を誇っています。金や銀などの貴金属を現在でも産出しており、商業ベースで採算がとれる金鉱山としては日本唯一のものです。かつて、日本には鉱山が多くあり、江戸時代から開削や技術開発が推進され、ゴールドラッシュとも呼ばれる時代を経てきました。しかし、1970年代から90年代にかけて資源の枯渇によって採算がとりづらくなり、鉱山は次々と閉山。そんな中1981年に発見されたのが菱刈鉱山であり、現在では住友金属鉱山によって採掘が進められています。金の産出量は1年に7.5トンと多量であり、日本国内での金産出のほとんどを菱刈鉱山が占めています。菱刈鉱山での金の埋蔵量は200トン前後と推定されていますが、これは国内の他の金鉱山での埋蔵量の合計を遥かに上回る量です。さらに2012年には新たに鉱脈が発見されており、日本の金産出をリードする存在だといえます。

菱刈鉱山には世界レベルのポイントも

日本国内で最大規模の菱刈鉱山ですが、世界レベルでみた時にも、上位にあがるポイントがあります。それは金鉱石の品質です。一般的に、世界の金山において鉱石1トンの中に含まれる金は3?5グラム程度ですが、菱刈鉱山の鉱石は1トンあたり金約40グラムという量を誇っており、高品位な鉱石として知られています。また、採掘を行っている住友金属鉱山は菱刈鉱山での収益をもとに、海外鉱山への投資も行っています。アメリカ、チリ、オーストラリアなど投資先は多岐にわたり、それぞれの鉱山での産出量も向上しているため、菱刈鉱山は世界の採掘を支える重要な収益源であるともいえます。投資だけでなく、採掘や鍛錬などの技術の継承・革新にとっても重要な場となっており、これまでの採掘で培われた技術をもとに、海外の新たな技術を取り込んで操業に成功させています。このように技術面でも世界をリードする存在となっており、これら様々な面において、菱刈鉱山は世界の金産出に欠かせない鉱山であるといえます。


金山ならではの温泉や植物など

菱刈鉱山の鉱床は、「浅熱水性鉱脈型金銀鉱床」という種類に分類されます。地下深くにあるマグマが地表の割れ目に入り込むと、そこから噴出した地下水やマグマ水によって物質が溶け出し、その物質が冷えて固まると鉱脈になります。こうしてできたのが菱刈鉱山にある金の鉱床であり、65度の温泉も湧き出ています。この温泉は近くにある湯之尾温泉に供給され、周囲一帯は温泉街として栄えています。また、金山には金を取り込む植物が多く繁殖する傾向があり、菱刈鉱山においてもヤブムラサキなど金山周辺に分布する植物が観察されています。菱刈鉱山は私有地となっているため一般の見学はできませんが、周囲の温泉を楽しみつつ金への理解を深めてみてはいかがでしょうか。