日本の民族衣装である着物。一時期、洋服に押され気味でしたが、最近は若い人の間で「着物」が見直されつつあります。 着物は慣れないうちは着付けやルールが難しいと思われるかもしれませんが、そんなに難しく考えなくても大丈夫です。着物を楽しんで着こなしましょう。 最低限のルールを押さえたら、後は自分の好きなように着こなして大丈夫です。
ここでいう最低限のルールとは、季節や着ていく場所によって、着物を替えるという事です。これは覚えてみると、難しいものではなく理論的なものなのだと納得できるでしょう。着物は古来より、その季節に相応しい素材でできており、洋服に普段着とドレスがあるように、外出着と普段の着物があるのです。その違いも最初は分かりにくいかもしれませんが、いろんな着物に接していくうちに自然と身について理解出来る様になります。

着物の種類、まずは礼装について

着物は、大きく分けて、礼装、略礼装、街着、外出着やお洒落着に分けられます。成人式で女性が着ている華やかな振袖は、未婚女性の最高の礼装です。しかも、振袖の中にも大振袖と中振袖とあり、その名の通り、袖の長さの違いです。成人式で着られるのはもちろん「大振袖」です。袖が長いことによって華やかさが増します。成人式だけでなく、パーティーや結婚式に着ても好まれます。
既婚女性の第一礼装が留袖です。黒留袖、色留袖と2種類あります。結婚式で、黒地に金糸で豪華な刺繍が施された着物を見たことがあるかもしれませんが、それが黒留袖です。そして黒以外の留袖を色留袖といいます。どちらも背中、両胸、両袖と家紋を付けている場合があり、家紋の数によって格が変わってきます。
色留袖との区別が難しいと言われるのが訪問着です。訪問着は略礼装ですが、礼装としては最高級のものです。色留袖と同じように豪華な模様や絵柄が施されているので、その違いに苦慮してしまいます。ひと言で違いを説明すると、訪問着は袖に模様が入っているのが特徴なので、着物の上半身部分に模様があれば訪問着、なければ色留袖です。着物を探しに行く時、よく見ていくとその種類の違いも分かるようになるでしょう。
そんな色留袖よりは格下の扱いですが、訪問着は広げた時、全体が絵羽模様と言われる、絵画を描いたような模様が入っているのが特徴で、その模様によって煌びやかさや気品を表すことができます。

街着やお洒落着もたくさんある

礼装、略礼装とは異なり、お洒落を楽しめる着物の種類もたくさんあります。季節に合わせて存分に楽しみましょう。
まず種類としては、染めて作られる着物で、江戸小紋、加賀友禅等の友禅染めの小紋、紅型、ろうけつ染めなどがあります。素材も正絹と呼ばれる、いわゆるシルクから、洗濯機で洗えるポリエステルまで豊富にあります。洗濯機で洗えるのは気楽で良いですね。また江戸小紋は、1つ紋をつけることによって格が上がり、お茶会などにも着て行けるようになるので、1枚持っているととても便利です。江戸小紋とは、細かい模様が一面施されていて、遠目から見ると無地のように見えます。自分だけが地模様を知っていると言う洒落っ気を楽しめます。
江戸小紋だけでなく、「小紋」は種類も模様も豊富にあり、とても身近に着ることができます。お気に入りの小紋を揃えると、お出かけする楽しみが増えてきます。
その他には、木綿の着物が普段着として親しまれています。浴衣も木綿で出来ていますが、その違いは仕立て方にあります。浴衣は、着物より少し簡略化されて仕立てられており、より気楽に着ることができますが、最近は、浴衣に半衿をつけ、名古屋帯を締めて着物風に着こなす人も増えています。 また木綿の着物も現代風にデニム地でできたものが人気です。その手触り、着た時にすこし重く感じる着心地は、まさにジーンズ。ステッチ模様が入っているとお洒落度が増します。


何をいつ着るといいの?

これまで着物の種類のお話しをしてきました。では、その種類豊富な着物を、いつ着たらよいのか?着物は、季節によって着るものが変わってきます。
1月から5月までは、袷という冬物を着用します。裏地のある着物で、正絹や綸子、お召しなどがそれに当たります。とは言え最近は4月、5月はもう夏日のような暑い日もあるので、この昔からのしきたり通りに着こなすのは体もきついと言われ、厳密に守る必要はないようです。特に浴衣は、有名な浅草の三社祭を過ぎると店頭に並びだすので、5月からもう着ている人もいるくらいです。
5月から浴衣はさすがに早すぎるように感じるかもしれません。6月は、単衣という、生地は冬物とほとんど同じながら、裏地のなくなった1枚だけの着物を着ます。真夏前の薄手のものですが、期間がこの1ヶ月だけという何だかもったいないほど短く感じます。
7月、8月は、絽や紗、麻等、透け感のある薄いシャリシャリした触感の夏物を着ます。真夏の着物というと暑苦しいイメージを持たれるかもしれませんが、その素材も風を通し、かつ夏の厳しい陽ざしから素肌を守ってくれるので案外心地よいものです。真夏に白い着物に日傘をさした女性はとても涼やかな雰囲気があって素敵です。
9月は、6月と同じ単衣です。夏が終わり、秋が始まるたった1ヶ月、1枚仕立ての単衣を着ます。同じ単衣でも、6月と異なり秋らしい柄もあり、その違いを楽しむ事が出来ます。そして10月、11月、12月はまた袷の季節になります。こうして着物の季節はめぐっていくのです。

季節の移ろいに合わせて着こなす

何月にどの種類を着るかというお話をしましたが、あくまでも基本的なことです。最近は特に温暖化と呼ばれて久しい環境になってきており、季節の変わり目が曖昧になっています。4月や5月でもう真夏日もありますし、9月10月もまだまだ暑い日が続きます。近頃は、和服の知識をきちんと持ったお年を召した方でさえ、厳密に季節のルールを守ってはいないと言います。4月でも単衣を着る、袷など冬物は11月に入ってから着るという人も多いようです。自分自身が苦しくないよう、ご自身の季節感を大切にして下さいね。
また和小物と言われる、帯揚げ、帯締めも冬用、夏用など季節によって種類が異なりますが、それすら、最近はルールが緩くなっています。自分自身の好きな色柄、質感で選んでも大丈夫です。ご自身のインスピレーションを大切にして、着物生活を楽しみましょう。
しかし、ただ着るのではなく、そこは見た目の印象に気を遣う場合があるようです。例えば4月、10月など季節の変わり目に単を着る時は、色も柄も濃いめのものを選び、5月、9月に夏物を着るなら透け感のあまりないものを選ぶと言う風に、見た目が寒々しくないように工夫するということです。どんなに暑い日であっても、10月に浴衣を着るとさすがに周囲は寒そうに見えてしまいます。自分が楽しむ事が第一ですが、周囲へのさり気ない気遣いがあるといいですね。

着物の種類と季節での使い分けについてまとめ

礼装、街着、普段着と着物の種類は実に豊富で、季節によって変わってきます。素材も生産地によってたくさんあります。暖かい地域、寒い地域によって特徴が分かれており、知識が増えるほど、その楽しみも大きくなりますし、種類が多いと言うことは、選択肢がそれだけ多いと言うことです
。 TPOが一番難しいと思われるかもしれませんが、例えばパーティなどはよほど常識外れな着こなしでない限り、目一杯お洒落な着物で出かけて行きましょう。そういった晴れの場以外では自分の好きなように着こなしましょう。
正絹、シルクのような高級なものばかりではありません、綿やポリエステルは汚しても洗うことが出来るので便利ですし、綿は帯との組み合わせ次第でいろんな表情を見せてくれます。そして一番大切なのは着てみたい、着て出かけたいと言う気持ちです。まずは一歩踏み出して、知識は後からついてきます。