近年、日本古来の着物の美しさが見直され、和装の需要が高まってきています。 結婚式やパーティーといった晴れの場はもちろんのこと、ちょっとしたおでかけなど日常の場面でも着物で過ごしてみたいと考える方も増えてきています。 そういった、これから着物に親しみたいと思っている方たちがまず一番最初に直面する問題が「どの時期になんの着物を着てよいのかわからない」というものだと思います。 たしかに着物はいろいろな生地の種類がありますから、自分で判断するのも難しいと感じてしまいますし、間違えて着用してしまったら和装に詳しい人に怒られそう…と怖じ気づいてしまいますよね。 でも大丈夫です。季節による和装の着こなしのルールは実は簡単、とってもシンプルなんです。 これから、季節によってどんな着こなしをしたらよいのかをご紹介していきます。

長い時期に着用できる袷が基本

着物に親しむための初めの一着は「袷(あわせ)」と呼ばれる種類を購入することをおすすめします。 袷というのは、簡単に言うならば裏地と表の生地を縫い合わせた着物の事です。表の生地は絹や各種織物など様々ですが、裏地が付いていると「袷」という種類に分類されます。 なぜ初めの一着に袷をおすすめするのかというと、袷は着られるシーズンが長いためです。 一年のうち、6月~9月までの4か月間を除くすべてのシーズンで袷は着用が可能となっています。 「暑い時期以外はすべて着てもOK」と考えていれば簡単ですね。 袷という種類は長い期間楽しむことができるので、色や柄でおしゃれを楽しむのが基本です。 また合わせる帯の素材や雰囲気によって大きく印象が変わります。同じ着物でも、ざっくりとした織りの生地で、かつ温かい色の帯を合わせれば冬らしく見えますし、パステルカラーの艶やかな手触りの帯を合わせれば春らしくなります。 袷の着物自体も様々な色柄がありますので、帯や小物と掛け合わせて自分だけのコーディネートを楽しみましょう。 とくに着物の柄と帯の柄とでストーリーを作るようにすれば(例えば、梅の柄の袷にうぐいすの絵が入っている帯を合わせるなど)その時期だけのドラマチックな着こなしが完成します。 着物はシーズン先取りでコーディネートをすると一層お洒落に見えますので、いつもの道端に生えている季節の草花に目を配るなどして四季の色柄を楽しみましょう。

盛夏は涼しげな生地を着よう

7月と8月は日本が一番暑い時期です。着物も夏物と呼ばれる種類に切り替えて着用します。 夏物とは、パッと見たときに「透けている」と分かる着物です。 詳しくその素材の種類を紹介しますと、絽、紗、麻といったものが代表的です。これらは透けていたり、手触りがサラサラとしていていかにも「夏に着たら涼しそうだな」と感じることができます。 透け感があるので下に白い夏の襦袢を来て着用するのが基本的な着方ですが、あえて柄物の襦袢を着て柄を透かせて楽しむといったお洒落の仕方もあります。 これらの夏物は目にも涼しく、ほかの人が目にしたときに「とても涼しそうだな」と思える粋な着物ですね。 また、お祭りなどで目にする浴衣も夏の着物の一種です。 浴衣は襦袢を着ないで、肌襦袢やスリップなどの下着類の上から直接着用します。足袋も基本的に履きません。 襦袢がない分涼しく、盛夏には欠かせないものですね。 現在浴衣はいろいろな色柄がありますが、色の淡いものほど透けやすくなっていますので、濃い色の浴衣は昼間の着用に向いていて、白やパステルカラーの浴衣は夜に向いていると考えておきましょう。 注意したいのが、絽や麻といった夏物と浴衣とではドレスコードが異なるということです。 夏物は、小紋や留袖など従来の着物と同じだけ格と種類がありますから、冠婚葬祭の場でも着用できます。 しかし浴衣は洋服に例えると「Tシャツジーンズにサンダル」程度のドレスコードと考えてください。 お祭りやスポーツ観戦、また気の置けない友達とのパーティーには向きますが、高価なレストランや観劇といった場所では浴衣は避けたほうが無難です。  

季節の変わり目に大活躍の単衣とは

上記でご紹介した「袷」と「夏物」は、いきなり切り替わるわけではありません。 日本には四季がありますので、徐々に暑くなったり徐々に涼しくなっていく時期がありますよね。 そんな微妙な気温の時期に着用するのが「単衣(ひとえ)」の着物です。 単衣は言うならば裏地のついていない袷着物で、夏物と違って透ける感じはありません。 ぱっと見は袷のようですが、裏地が付いていない分袷より涼しく、夏物より暖かといっていいでしょう。 一応、日本古来のルールでは6月と9月の2か月間が単衣を着用する時期と定められています。 とはいえ、日本人全員が着物を着て暮らしていた時代と現代とでは、季節の気温も生活様式も変わってしまっています。 現代は夏の暑さが5月頃から到来することもあるので、その日その日の気温に合わせて5月から単衣を着用してもなんら問題がありません。 同じく、10月もまだまだ暑い日がありますので単衣を着用してもいいでしょう。 古いルールも大切ですが、現代に合わない場合は柔軟に考えたほうが身体のためですし、ずっと気持ちも楽です。 ここで取り入れたいのが、和装は「季節先取り」が粋という考え方です。 なので、5~6月に単衣を着るときは夏の小物や帯を、9~10月に単衣を着るときは冬の小物や帯を取り入れてコーディネートすると、和装に慣れている雰囲気が出るだけでなくとてもお洒落に見えます。

その他の着物もあります

基本は今ご紹介した三つの着物ですが、それ以外の種類も存在します。 まずはウールの着物です。ウールの着物は現在ほとんど生産されていませんが、昭和中期に大流行したものです。 ですからリサイクルショップなどで安価で手に入る上、丈夫で扱いやすいという初心者にも心強い味方です。 ウールは羊毛を原料にした織の素材で、基本的に裏地はついていません。しかしウールは袷と同じように盛夏以外の3シーズンすべてで着用可能という便利な着物です。 ウールの利点は何といってもその扱いやすさにあります。日常生活で着られていた着物なので、シワになりにくく非常に軽いのが特徴です。 しかもウールの洋服のように、お洒落着洗い用の洗剤で自宅で洗うことができます。 そしてウールは色柄が多種多様であり、洋服生地のようにモダンでポップな柄のもの、逆に古典的な柄のもの、和装の定番である絣や格子柄、中には友禅風の模様といったものまで存在します。 そんなとっても便利なウール生地ですが、虫が付きやすいため保管には防虫剤が欠かせません。 また、一般的にカジュアルとされる素材なのでフォーマルの場での着用には向きませんので注意しましょう。 その他には現在の化繊の着物があります。化繊というと一昔前は静電気などがひどい上に「夏暑く、冬寒い」という着心地の悪い生地の代表のように言われていましたが、現在は化繊の生地もかなり進歩し、正絹とほとんど変わらない風合いと着心地のものも多数存在します。 なりより、化繊は自宅で気軽に選択できるのが最大の魅力です。化繊にも袷、単衣、夏物仕立てがありますが、ウールのように単衣でも3シーズン着られる風合いのものがあります。

季節に合わせた着物の種類と選び方まとめ

いかがでしたでしょうか。このように着物には季節によって切り替わる種類がありますが、それを判断するのはそんなに難しい事ではありません。 その時の気温や天気を見て、一番気心地のよいものを選べば良いのです。 さらに季節の草花や風物詩といったモチーフを取り入れることにより、心も豊かになっていくと思います。気張らずに、洋服と同じように気軽にコーディネートすれば、もっと和装の世界が広がることでしょう。 もし自分で判断しかねる場合は、お店の人に尋ねたり、和装に慣れている年配の方に尋ねてみましょう。 快く教えていただけるだけでなく、思わぬ着こなしのアイデアを教えてもらえたり、交流の輪がどんどん広がっていきます。 この機会に、着物は種類が沢山あって難しいという思い込みは捨てて、自分らしい素敵な和装スタイルを見つけてみてください。