普段の生活の中で着物を着る機会というのは一般的な生活を送る人にはほとんどないかもしれません。 あまり着物を着る機会がなくても、たとえば成人式に振袖を着たり、結婚式で留袖を着たりすると、不思議と背筋が伸びてとてもたおやかに美しく見えるものです。
着物は日本人をとても美しく見せる日本古来の伝統的な衣装です。着物離れが進んでいるとはいえ、やはり着物を着ることはちょっと自分をグレードアップさせ、背筋を正してくれることでもあるようです。そして美しい着物を引き立たせ和服姿になくてはならないのが帯の存在です。その種類や色柄、そして結び方を変えるだけで同じ着物でも全く違ったイメージの着こなしができるため、いろいろな結び方をすればお気に入りの着物を何通りにも楽しみながら着こなせるというところが着物の最大の魅力だと言えます。

着物に合わせる最も基本的な一重太鼓結び

着物の着付けの中で最も基本的な帯の結び方にあたるのが一重太鼓結びです。シンプルで扱いやすい結び方なので初心者でも簡単に結ぶことができます。
まず、手先になる方を半分に折って輪を下にして左肩にかけて腰の手前までおろして止めます。背中で下側の帯をつかみ右手で帯を引きながらもう一巻して柄を見ながら位置を決め、しっかりと締めます。次にたれが後ろにきたところで手先を下してたれとクロスさせ、手先を前に持って着て軽くとめておきます。たれでお太鼓部分を形作り、お太鼓の下のラインを折ってたれの長さを決めます。あまった帯の部分を中に折り込み両側をクリップなどでとめてお太鼓の下線になる部分に仮ひもを通します。
おび枕におび揚げを巻きつけ、お太鼓の下に入れひねったおびを指で伸ばしながら枕を上に持ち上げて背中に付けます。おび枕のひもを斜め前に引くようにして結び、おび揚げは軽く結んでおきます。帯の下を通した仮ひもを前で結びお太鼓の形を整えたら手先を仮ひもの通っている部分に折り返します。おび締めをお太鼓の真ん中あたりを通る位置に通して前に回し、手先を押さえるようにしながらおび締めを前に引いてしっかりと結んだら仮ひもを取り外します。
おはしょりの長さはあまり長すぎないように大体人差し指1本程度にすることと、おび締め、おび揚げ、衿の合わせ目の部分が体の中心線に揃っているかを確認するのが美しく仕上げるポイントです。

ミスの正装振り袖姿を彩るふくら雀や花結び

古典的なムードの漂うふくら雀結びはミスの正装であるお振袖を彩る帯結びとして愛される結び方です。膨らみのあるお太鼓とたれで形作るのが特徴で、ふっくらとした女性らしい優しさを感じさせる結び方です。お太鼓の大きさを変えることで着る人の体形に合わせて形作ることができます。
前に帯板を当て、柄どまりを背中心にして二巻きします。この時手先は手の4つ分の幅の長さを目安にします。たれが上になるようにおび上で結び、たれの結び目の近くで肩から少し出るくらいの羽の部分をとり、山ひだを2つ作ってゴムで結わき、仮ひもで押さえておきます。次に手先の部分で同じように山ひだを作ってゴムで留め、仮ひもの下に入れます。
左右の羽を交差させ、その上におび枕を乗せて結び、仮ひもを外します。枕におび揚げをかけて前で結び枕の幅と同じくらいあけて下に箱ひだをつくります。箱ひだをとったたれにひもをかけ羽と背中の間を通して前で結びます。帯の幅の約三分の一の位置でたれを折り曲げ、おび締めを通して結び、お太鼓部分を作ります。
おびの裏側の部分を中に入れ込んだら左右のお太鼓を広げ、最後に羽を開いて整えれば完成です。初々しい振り袖姿にふさわしいふっくらとした可愛らしい帯結びの完成です。ふくら雀の羽の部分の中心をおび締めで結ぶことで蝶がとまったような可憐な形の花結びにアレンジする着付け方にすることもできます。


クラシックで豪華に着付ける立て矢結び

お振袖の帯結びの中でも蝶結びを斜めにしたようなイメージの立て矢結びは、立体的で華やかさがあり、背の高い人やシンプルな柄の振り袖にもよく似合う結び方です。
おび板を当て、柄どまりを左わきにあわせて手先を上にして2回巻きます。結び目用に脇を三角に折り上げ、手先は三つ折りにしてからおびの上の線で手先が上に来るように一回結びます。次にたれを広げて羽の大きさを決めますが、大きさを決める時には着る人の体形に合わせて上の羽部分が左側から5センチ程度、下の羽部分がおはしょりの下線の部分に来るように作り、たれを内側に折り込みます。
立体的に仕上げるために、巻いたタオルを羽と並行になるように羽の間に入れます。このとき既成のおび枕を使うこともできますがタオルを巻いた枕の方が安定しやすいのでおすすめです。中に挟んだタオルを軸として羽の中心部分を作り、下から上にたすき掛けのような状態にひもを通して固定します。羽の中心部分におび揚げをかけて前で結んだら手先の部分をおろします。
あまった手先は外側にくるくると巻いておびの上腺から中に入れ込みますが、手先をおびの中に入れることによって結び部分が安定する効果もあります。羽の下部分の手先におび締めを通し、前で結びます。最後に羽の形を整えれば美しい立て矢結びが完成します。振り袖姿を引き立て、立体感があってとてもゴージャスなイメージの着付け方です。

浴衣姿を涼しげに着付ける一文字結び

シンプルでとてもすっきりとした着付けに仕上がるのが一文字結びです。涼しげで浴衣姿などを大人っぽく魅力的に着付ける時に最適です。
手先を半分に折って45センチ程度とったら、体の中心から40センチほどの所を左手で持ち、手先が上になるように帯をもう一巻して、たれ先を脇から三角に折って手先が上にくるようにしておびの上線で強くひと結びます。結び目の位置にたれを広げて腰幅に羽をとります。たれ先を内側に折り込んで羽の部分を作り、羽の真ん中に二つ山ひだを谷折りにして作りますが、この時ひだの凹凸部分を同じ幅に整えるようにするのがきれいに仕上げるためのコツです。次に手先を下ろして羽の中心部分と結び目を一巻してから余った手先の部分を外側にくるくると丸めておびの胴回りの中に入れ込みます。
最後に羽の形を左右のバランスを見ながらキレイに整えたら、結び目と帯の後の下の部分をそれぞれ手で持って、右回りで背中側へと全体を回してゆき、中心部分を確認すれば出来上がりです。この一文字結びは浴衣の着付けの時の基本的な結び方である文庫結びがベースになったもので、羽が立体的に立ち上がるようにすっきりと整えることで涼しげでつやっぽい後姿が魅力的な着付けが完成します。文庫がどちらかといえば可愛らしいイメージに仕上がるのに対し、スッキリと大人っぽい着付けに仕上がるのが特長です。

着物の着付け:帯の結び方まとめ

着物姿に憧れるけれど、着物を着るにはいろいろ面倒な決まり事もありそうだし、なんだかちょっと敷居が高いと感じるという人は少なくないようです。でも、着物はどんな帯をどんな結び方にするかでいろいろなアレンジが楽しめる装いです。そのレパートリーはむしろ洋服の組み合わせよりも変化に富んでおり、TPOに合わせて様々な種類のおびを選ぶだけでなく、組み合わせる小物を変えるだけでも全体の印象は驚くほど変わります。
上品に格式高い着付けにすることも、おしゃれで粋な感じの着付けにすることも、組み合わせによっていろいろな楽しみ方ができる事こそ着物の最大の魅力だと言えます。
結び方に工夫したり組み合わせる小物に個性を持たせるなどすれば、どんな洋服にも出せないセンスあふれる装いができる事でしょう。日本人を最も美しく魅力的に見せてくれる着物の良さを見直してみるのも素敵です。