鮮やかに彩られた模様や、華やかな柄行き。昔から続く着物文化はこれまでに見る者を圧倒する多種多彩な着物を生み出してきました。

今回紹介するのは、そんな華やかな着物の世界でも特に高級品の「絞り着物」。
特徴や着物の格、着ていける場所などを解説しました。ぜひ絞り着物の魅力を深く知りましょう。

絞り着物(総絞り)とは

絞り着物(全絞り)とは、絞り染めという技法を用いて作られた着物のことを指します。
全絞りは、全ての生地が絞り染めで作られていることです。

しかし、「絞り染め」と聞いてもパッとイメージできませんよね。
絞り染めは、生地を小さくつまんで糸で括り、染色を部分的に防いで模様を施します。

括った糸をほどいた時にできる「くぐり粒」というものが、デコボコした風合いを再現しています。
作るには高度な技術を要するため、製作期間は1年以上もかかるといわれています。
そのため、絞り着物は高級品なのです。

「絞り」の歴史はかなり古く、紀元前にまで遡ります。日本に伝わる前に、インドやアフリカで自然に始まりました。
日本に伝わったのは、奈良・飛鳥時代。それから絞り技法を使った着物が作られるようになったのです。

江戸時代には上級国民の間で大流行。
多くの女性は絞り着物の華やかな見た目に憧れたそうです。

紀元前から受け継がれてきた伝統的な技法を用いて作られる絞り着物は、現在においても日本の伝統工芸品として世界に誇る着物です。

絞り着物の格

一流の職人が長い時間と丹精を込めて作り上げる絞り着物。それゆえに値段は高額です。
「じゃあ、着物としての格も高いの?」と思われがちですが、格は高くありません、
絞り着物は、最も格の低い「外出着」。小紋や紬といったカジュアルな着物と同様です。

なぜ、高い着物なのに格は低いのか?と疑問を持たれた方は多いはず。
というのも、着物の格は、値段によって決まっていないからです。

着物の格は作られた時に決まっています。
格が決まるポイントは2つ。
・柄・模様の多さ
・光沢感の有無

柄・模様が多い着物は、多くが格の低いものです。小紋や紬といった外出着は、全体的に均一に柄や模様がほどこされていますよね。
一方、格の高い留袖は、下半身にだけ模様が施されており、少ないことがわかります。

絞りの着物は、デコボコした生地や華やかな柄が多く入っていることから格は低くなってしまうのです。

次に光沢感。
光沢感の有無は格を決める重要な要素です。というのも、古くから光沢は権力の象徴とされてきました。
王様の姿をイメージするとわかりやすいですが、王冠をかぶって、装飾品は金や銀などをまとっていますよね。
着物においても同様の考え方で、光沢感のあるものは格上、光沢感のないものは格下とされています。

絞りの着物は、その作り方からザラっとしているので光沢感はあまりありません。

これらの2つのポイントを考えてみると、格の低い着物であることがわかります。

では絞りの振袖はどうなのでしょうか?振袖は未婚女性の礼装着とされていて、結婚式などの格式張った場所でも着用されます。

ズバリ、絞りの入った振袖は、「振袖」として認識されるので、格式張った場所でも問題ありません。
このあたりがとてもややこしい部分なので、絞りの着物は格が高いと勘違いされやすいです。

絞り着物の種類

絞り着物と一口にいっても、実は産地や作り方によって、様々な種類があるのです。主な種類を3つ紹介します。

京鹿の子絞り、疋田絞り

京鹿の子絞りとは、京都で生産された「鹿の小絞り」という絞り・製品のことをさします。
「鹿の小絞り」は総絞りの代表的な技法。絞ることによってでできる四角い模様が、小鹿の背中模様に似ていることが由来です。

京都で生産される「鹿の小絞り」は最も上質とされています。京都では絞りの技術が発達しており、高度な技術を持った職人がたくさんいたからです。

そのため、他地域で作られる「鹿の小絞り」よりも卓越した技術で、高品質の絞り製品を作ることができるのです。

「京鹿の小絞り」には、疋田(ひった)絞りという技法があるため、総称して「疋田絞り」とも呼ばれます。

有松・鳴海絞り

愛知県名古屋市の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染め技法・製品のことです。
江戸時代以降の絞り製品は、この有松・鳴海絞りが大半を占めていました。
その確かな技術で、国の伝統工芸品に指定されています。

木綿布を藍染めしたものが代表的で、他の地域で作られる絞り製品とは異なる模様が特徴です。

名称については、「有松絞り」「鳴海絞り」と区別して呼ばれることもあります。
2つの違いはありませんが、こうして区別されて呼ばれる歴史の背景がありました。
もともとは有松地域で絞りの生産が始まったとされていますが、生産が盛んになったころ、鳴海地域でも小規模の生産が行われていました。

江戸時代になると、両地域は本家争いや訴訟合戦などでいがみあいます。というのも有松で生産される「有松絞り」は鳴海地域でも販売されていたからです。

かの有名な歌川広重が描いた「東海道五十三次」にも鳴海宿で町人が有松・鳴海絞りを着ている姿が描かれています。
そのようなこともあり、江戸では「鳴海絞り」と呼ばれていたそうです。

この本家争いは、1984年に有松・鳴海紋会館が完成したことで幕を閉じました。現在では有松・鳴海ともに協力して地域の発展に努めているそうです。

南部絞り

南部絞りとは、現在の岩手県にあたる「南部藩」で作られた絞り染め技法・製品のことです。
ムラサキ草やアカネ草といった植物を用いて染色する紫根染め、茜染めが有名。使い古すほど出てくる味わいや色の変化を楽しめます。

絞り着物を着る季節

絞り着物_季節
絞り着物を着る季節は、着物の仕立て方や生地によって異なります。

仕立て方には「袷」と「単衣」がありますが、
・袷仕立てなら、寒い季節
・単衣仕立てなら、暑い季節
が推奨されます。袷仕立ては裏地があるので、中の熱を逃さず、暖かく着られます。
一方、単衣仕立ては1枚で仕立てられているため、通気性がよく熱を逃してくれます。

次に生地による違いです。
保湿性の高い絹や木綿、ポリエステルといった生地は寒い冬の時期に着るのがよいでしょう。
逆に暑い夏の季節は、通気性と吸水性に優れた麻がおすすめです。

絞り着物の帯の選び方

絞り着物は見た目が華やかなため、着物の良さを崩したくないという思いもあって帯選びに迷いますよね。
帯を選ぶ時には、TPOを意識すれば簡単です。着ていく場所や場面をイメージしてみましょう。

たとえば、友達とのお食事会、観劇を見るなどの目的であれば、カジュアルな装いが望ましいです。
そういった場合には、カジュアルな半幅帯、セミカジュアルな名古屋帯などを合わせるとよいでしょう。
柄や模様は、着物と同じく柄物にして派手な見た目にするのもよし、着物を目立たせるため落ち着いた雰囲気の帯を選ぶのもよしです。
逆に少しかしこまった場所では、半幅帯のような普段着用はやめて、金色銀色をまとった名古屋帯をチョイスするとよいでしょう。
名古屋帯は普段着用ですが、金銀がついた名古屋帯は準礼装にあたります。

このように、帯も柄や模様によっては格式張った場所でも使えるので、単純に帯の格だけで判断してはいけません

。 ただ、絞り着物の格的に格式張った場には着ていけないのでご注意を。帯が礼装用でも大部分を占める着物が礼装着でないとマナー違反になります。

まとめ

絞り着物は、職人の高度な技術によって長い時間を掛けて作られる特別な着物です。
そのため、普通の着物よりは高くなってしまいますが、デコボコした独特な風合いは「絞り着物」にしか出せない魅力。

一度買ったら受け継がれ続ける着物は、少し贅沢なものを選んでみるのもよいのではないでしょうか。
もし贅沢なものを望むなら、今回紹介した絞り着物がおすすめですよ。


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