着物は一緒に身につける和装小物によって、がらりと印象が変わります。上品にも派手にもなりますし、遊び心を生かすことができます。また和装小物は、バッグや帯留など見せるものだけではなく、履き物や帯を締める時に使う帯枕なども加わります。そんなもの、どれも同じと思われるかもしれませんが、こうした道具にこそ、着物の着付けがしやすくなるヒントが隠れているのです。
和装小物とひと口に言っても、その種類は草履から帯締めなどの多岐に渡ります。またいくらあっても欲しくなる、購買意欲をそそるほどに種類が豊富でもあります。帽子が好きな人が帽子をたくさん集めてしまう、靴好きが靴をたくさん集めてしまうような、ファッション好きなら理解できる心理でしょう。
着物も同じくらい個性やお洒落を楽しむ事が出来るのです。それが和装小物の深い魅力であり、着物の魅力でもあるのです。

まず何から揃えたら良いか

着物を着てみたい、と思ったらまず着物と帯を探しに行くでしょう。呉服屋さんやリサイクル着物ショップで気に入った柄の着物と出会った時の喜びの大きさは計り知れません。しかし、ここで、着物と帯があれば終わりという訳ではないことに気がついて驚くかもしれません。そう、着物を着るには、その中に着る下着や襦袢、着物を押さえる腰紐や伊達締め、半衿といった細かい和装小物の種類が必要になってくるのです。
最近は、ネットショップで、初めて和装をする人のためのスターターセットのような、着付けをするのに必要最低限の和装小物が付いてくるセットが販売されています。呉服屋さんで長襦袢を誂えるととても高価になってしまう場合もあるので、これは初心者にはとてもありがたいセットですね。まずはこうしたものを購入しましょう。
いきなり高い長襦袢や帯締を無理して揃える必要はありません。無理をすると続かなくなってしまいます。長襦袢も、リサイクルやアンティークのお洒落な長襦袢もあります。古さやかつて誰かが着ていたことが気にならければ、既製品とは一味違うお洒落な長襦袢は和装の大きな楽しみになります。袖口からちらりと見える長襦袢の模様はお洒落のポイントになりますし、何より着ている本人にしか分からない密かな楽しみになるのです。昔から江戸の粋とは見せ過ぎない事、と言われています。

個性が光る和装小物たち

お太鼓結びをする時に必要な帯枕や帯板、着付ける時に押さえておく腰紐、伊達締め等はそれこそ他人の目に触れないので、和装小物の中でも地味な位置にいますが、着付けをする上ではとても重要な役割を担っています。きちんと袂を押さえておかないと着崩れてしまいますし、お太鼓は簡単ではありますが、てっぺんをなだらかに調えるのは帯枕が必要不可欠なのです。また、帯締を締めた時、帯にしわが寄らないようにするのにも帯板は必須です。
その他人の目には見えない小物でも、小花模様の枕帯や、古布でできた大柄な模様の腰紐など個性が光る小物もたくさん種類があります。これらも、みんな着ている本人にしか分からない密かな楽しみです。ささやかですが、こうした楽しみが密かな優越感を生み、和装をする上での自信にもつながります。
また、帯の前部分、お腹にあたる箇所に挟む帯板には、可愛い柄のものだけでなく、小さなポケットがついている機能性に優れたものが最近は増えています。このポケットに携帯電話や、ICカードなどを忍ばせて、さっと取り出す仕草はとてもスマートです。
着ている本人にしか分からないのが基本ですが、着付けを始めたばかりで着上がりが心配な人は、見せ紐と言われる腰紐で帯を支えている場合もあるようです。本当は帯締めや帯枕の紐だけで支えるものですが、心配なうちはそれもいいでしょう。見せ紐はその名の通り、見えてもいい腰紐。その分柄にも凝ったものが好まれて使われます。


本領発揮、画竜点晴を演出する小物

和装小物の種類は着物を着る時に必要な道具類だけではもちろんありません。表方に出てきてその美を競うものもあります。帯留は小さいものから手のひらサイズまで大きさも様々、素材もプラスチックから本物のダイヤモンドなど宝石をあしらったものとその種類は幅広くあります。明治、大正、昭和初期の、着物が日常着だった頃の良家の子女や奥方は着物や帯締め、半衿は正絹で誂え、帯留めも大変凝って特別に職人に作らせていたといいます。昔のお金持ちの家の蔵には、今でもそうした宝物がたくさん眠っていて、時折売りに出されていますが、見ているだけでため息がでるような豪華なものがあります。本物の天然石や宝石でできたアンティークな帯留は、見ているだけでため息が出てきます。やはり古くても、本当に良いものは魅力が色褪せる事がないのだと納得できるでしょう。
そんな高価なもの手が出せないし、身に着けるのも恐い、と思うかもしれません。もちろんそんなに背伸びをしなくても、もっと気軽に楽しめる種類の帯留もたくさんあります。
お洒落な人は、市販のブローチを少し細工して帯締に通して使ったりしています。洋風のブローチでも、色柄によっては着物にとてもよく似合います。また夏ならガラスでできたものや金魚を象ったもの、冬には雪だるまや、クリスマスツリーなど、遊び心たっぷりのものもあります。クラシック音楽のコンサートにヴァイオリンを象った帯留をしていけば周囲からとても好意的に見られるでしょう。
帯留は、帯の前のお腹の部分、つまり体の中心に飾るものでとても目立つものです。着付けの仕上げに帯留を付けることで、全体の着姿が決まってしまうので、画竜点晴と言われています。しかし初めは難しく考えず、自分の直感で好きなものをつけるとよいでしょう。

指1本分の幅を彩るお洒落

帯留ほど目立たないけれど、やはりすぐ目がいってしまうのが衿元です。半衿とは、もともと着物の衿を汚さないために襦袢に着けるようになったものです。着付けする時は、人さし指1本分の幅を出すのが基本とされています。お洒落な人は、指3本分くらい出して見せていますが、やはり着慣れている人は見せ方がとても上手です。
その半衿も、夏ならビーズやレース柄、麻でできた涼し気なもの、冬ならホリデーシーズンにクリスマスやお正月を模した柄など、種類がたくさん売られていて、見るとついついほしくなってしまいます。
お洒落なら何でもいいという訳ではなく、足袋と同じでフォーマルな場所へ行くならやはり真っ白なものが好まれます。TPOに合わせて揃えましょう。お友達とお出かけ、パーティなどへは、自分の好みで思う存分に遊びましょう。お洒落な手ぬぐいを縫い付けて、半衿の代わりにしたり、好きな布に自分で刺繍を施したりする上級者もいます。因みに日本刺繍は作品によって絵画のように見えるとても豪華なものです。何にしたらいいか分からないうちは無難な白や、刺繍の施されたものにしておいて、上級者がどんな半衿をつけているか観察しておきましょう。聞けそうならどこのどんな種類の半衿か聞いて参考にすると良いでしょう。
総刺繍のものは着物でも半衿でもお値段が張りますが、その豪華さはやはりとても魅力的です。

和装小物で着物姿に個性を演出

和装小物は用途によって変わりますが、単純に用具という訳ではなく、個性やお洒落を楽しめるものです。見えない部分にこそ凝るのは日本人の昔からの美意識で、だからこそ種類も豊富にあるのです。選択肢が多すぎるとかえって悩んでしまうかもしれませんが、最初のうちはネットショップで安いものを手に入れて、徐々に自分の好みを探していくとよいでしょう。
骨董市に行く機会があったら、古くてもとても魅力的な小物がたくさん見つかります。帯揚げと帯締めも、必ずしもセットで揃える必要もありません。要はバランスが良ければいいのです。どんどん身に着けて、自分の体に着物を馴染ませていきましょう。おのずと好みの和装小物に出会えてコレクションが増えていきます。その日の気分で着物や帯、小物をセンス良く揃えられるようになったら、もう上級者です。