コレクションの王道、切手。なかでも中国切手には、買取価格が数万円にもなるプレミア品と、そうでないものが存在します。 プレミアがつくものは数万円、そうでなければ二束三文。この買取価格の差はどのような理由で生まれるのでしょうか。
中国切手の特徴として「比較的近年の、新しいものでも高額買取される」という点があります。一番有名な切手といえば1840年発行の世界初の切手「ペニー・ブラック」ですが、こんなに古いものが手元にあるということはあまりないでしょう。しかし中国切手の場合は1980年のものにもプレミアがつきますので、お家の中に眠っていたとしても不思議はありません。価値のありそうな中国切手を見つけたとき「プレミアがつく理由」を知っていれば有利に買取をしてもらうことができます。
キーワードとなるのは、「希少性」「文化大革命」「中国の経済成長」です。代表的なプレミア切手とともにそれぞれ見ていきましょう。

新しいのに「希少」なのは

印刷のズレやミスなどのある、いわゆる「エラー品」を除けば、基本的に切手やコインなどのコレクションの世界では「古いもの」のほうが価値があるとされます。それは単純に、古いもののほうが現在まで残りにくく数が少ない、つまり希少性があるからです。「ペニー・ブラック」同様、日本で初めて印刷機で刷った「小判切手」(1890年ころ)や、軍の支給品であった「軍事切手」(1910~1944年ころ)などのプレミア切手はいずれも100~70年近く昔のものであり、保存状態の良いものも少なく希少であるのは当然と言えるでしょう。ところが中国切手の場合、買取価格の高いプレミア切手はそのほとんどが1960年~1980年ころに発行されたものに集中しています。これには中国ならではの理由があり、歴史と政治、文化大革命が深く関わっています。
文化大革命では切手の発行が制限され、コレクションも禁止、また外国への輸出もできなかったため、この時代のものはごく少数しか残っていません。また天安門の図柄など、政治的な意図によって発行後に回収処理されたものもあるため、さほど古い時代の切手ではなくても現存する数が非常に少ないプレミア中国切手が存在するのです。
文化大革命の時代に交流の多かった日本からの旅行者がお土産として国内に持ち込んだため、文化大革命の時代の切手は中国よりも日本のコレクターが多く持っているとされます。

文化大革命と切手の流出

1966年~1977年ころまで続いた中国社会の混乱期である文化大革命は、中国切手にも大きく影響を与えました。資本主義文化を撤廃する流れの中では切手蒐集も西洋文化であり、労働者にあるまじき、恥ずべき趣味とされました。切手のコレクションは発見されしだい官憲に焼かれてしまい、多くの貴重な切手がこの時期に失われたのです。
一方、当時の日本では経済も右肩上がりで切手のコレクションが大ブームでした。中国で切手を買い付けて日本に持ち帰り、コレクターに売るという商売をする者もいて、この時代の切手は日本に多く流出しています。革命が終息した1977年以降も、しばらくは中国国内で経済が停滞し、禁止はされないものの人々に切手コレクションなどする余裕はありませんでした。また中国が外貨獲得のため切手の輸出を再開したこともあり、ますますこの時代の切手は中国国内で品薄になる「ドーナツ化」が進んだのです。
投資のつもりはなく趣味で切手のコレクションをしていた方たちが60代、70代となってリタイアされ、手元のコレクションを改めて査定してみたらビックリ、という話をよく聞きますが、ほとんどがこの文化大革命時代の切手を多く所持していたケースです。好事家のコレクションだけにシートやシリーズが揃っていたり保管状態が良いものが多く、そういったものは大変な高値がついたのです。


中国の経済成長と切手の「買戻し」

どんなに希少な切手であっても、「買いたい」という人がいなければ買取価格は上がりません。近年、中国では経済成長が著しく、この活況で生まれた富裕層を中心とした切手ブームが起きています。現在の中国切手の主な買い手はこのような中国人たちです。彼らに人気のある種類が買われて値上がりをし、それを見てさらなる値上がりを見込み投資用にまた別の人間が買う、という仕組みで一部のプレミア中国切手の買取価格は発行当時の額面の何千倍にも膨れ上がってきています。
希少性に加えて、現在の中国の「建国の父」である毛沢東の姿や彼の言葉を図案にしたもの、文化大革命の勇ましい時代を感じさせる戦車など兵器の図柄、また中国の大自然を図案にした雄大なものが彼らには好まれ、人気となっています。
日本では1960年ころから切手ブームが巻き起こり、中国切手を含むさまざまな切手をコレクターが買い集めましたが、このブームと文化大革命の時期が重なっているため、とくに日本国内には希少な中国切手が数多く存在します。中国自体は長い歴史を持つものの、現在の中華人民共和国はまだ建国して70年に満たない若い国です。革命で破壊され散逸してしまった文化へのあこがれは強く、そのため切手にしても経済力を手にした今、「日本から買い戻す」という意識の富裕層が多く、経済の堅調がある限り中国国内での切手ブームはそうたやすく下火にはならないと見られています。

代表的なプレミア切手

もっとも有名なプレミア中国切手といえば、「赤猿」でしょう。「赤申」とも表記されるこの切手は文字通り真っ赤な背景に子猿が一匹書かれており、輝く金と赤のコントラストが目を引いて配達の途中で切手だけ剥がされる事件が多発したほど美しいものです。猿の顔の金色が美しく残っているほど高額で取引されます。
発行の1980年の干支であるサルを図案として中国で最初の年賀切手として発売されたもので、縁起を重視する中国人には大変に人気があります。知名度こそ赤猿に及びませんが、数ある中国切手のなかで買い取り額ではおそらくトップクラスであろうと言われるのが「全国の山河は赤一色」です。真っ赤に染まった中国大陸地図と民衆の描かれた図案ですが、現在の台湾にあたる部分が赤く染まっていないというミスがあり、これを重く見た政府によってすぐに発行中止とされた切手です。現存する数がとても少なく、未使用で数千万円の値がつくこともあります。その貴重さゆえに、赤猿と並んで贋作が最も多く作られている切手でもあります。
またもう少し手ごろなものとしては、「大パンダ」があります。1963年発行の1次、1973年の2次とあわせて6種類が発売されていますが、どれも中国らしい、可愛いパンダの図柄で世界中で人気の切手です。買取価格はバラであれば数千円程度ですが、1次2次そろえた美品であればより高額が見込めるでしょう。

中国切手の買取にはプレミアとそうでないものがあるまとめ

中国特有の政治や歴史を感じさせる図案やスローガン、日本にも馴染のある漢字や干支のモチーフ、華麗な色彩や雄大な大自然のデザインなど、中国切手はどれも魅力的で我々を惹き付けてやみません。しかし市場での買取となると、プレミアがついて何万円、何十万円の値がつくものは限られてきてしまいます。買取価格は業者によっても切手の状態によっても変わりますし、また前述のように買い手の多くが中国人であるため中国の経済状況や為替によっても左右されます。
そのため買取の際には専門家に鑑定してもらうことが重要です。とはいえ事前に中国切手のプレミアについて知っておけばある程度価格も見当がつきますし、「これは毛主席の図柄だから高額かも」「この発行年は文化大革命だな」など、見るポイントが増えて中国切手をまた一歩、奥深く楽しむことが出来るのではないでしょうか。